財産管理を任せる人とその監督人を自由に決められる

成年後見は、申立人が財産管理を任せる候補者を推薦できますが、最終的に選任するのは裁判所です。また、たとえ後見人が家族の場合でも、監督人として弁護士や司法書士のような専門家が付くのが一般的です。また、任意後見では、財産管理を任せる相手は本人が選べるものの、裁判所が選んだ後見監督人の監督を受けます。したがって、どちらの場合も身内ではない第三者から財産管理の一定の制限を受け、本人の意思にそぐわない管理の方法になってしまうケースも少なくありません。
一方、家族信託は財産管理を任せる相手と監督人の両方を本人が選べます。そのため、本人の意思を最大限尊重した財産管理ができるのです。

財産の活用が柔軟にできる

後見制度は、本人の権利や財産を守るための制度です。つまり、現在の財産の維持管理が目的であり、それ以外の出費や財産の積極的運用は基本的に認められていません。例えば、相続対策としての生前贈与や不動産の購入、新規の投資、家族旅行費用の肩代わりなどもできなくなります。また、本人名義の自宅不動産を売る場合は裁判所の許可が必要となり、売却する必要性や売却内容の相当性などについて資料を提出して説明しなければなりません。
一方、家族信託であれば、財産管理と相続税対策・資産運用を同時に行うことができます。信託契約の範囲内であれば、所有不動産を担保に入れ、新たに収益物件を購入するといったことも可能です。加えて、裁判所を介することなく手続きを進められるので手間がかかりません。

受託者への高額な報酬が不要

後見制度の大きなデメリットの1つに、後見人や後見監督人への報酬が高額だという点が挙げられます。専門家が後見人(後見監督人)に選任された場合、月々2~6万円(1~3万円)程度の報酬を支払わなければならず、本人が亡くなるまで継続します。仮に後見開始後に被後見人が10年間存命だった場合、合計で240~720万円(120万円~360万円)という多額の費用が必要となる計算です。財産を管理するために必要な経費によって残っている財産が減ってしまう、などという場合も考えられます。

相続による遺族のトラブルを未然に防げる

家族信託契約で財産を承継する相手を決めておくと、相続が発生した際に遺産分割協議はいらなくなります。遺産分割協議では、通常相続人全員が集まって財産の分配を決めなければなりませんが、それぞれが自身の意見を主張してスムーズに進まなかったり、結果的に家族関係の悪化につながる「争族」になるケースも少なくありません。家族信託により親が事前に財産の配分を決めておくことで、そういったトラブルを防止でき、健全な家族関係を維持できます。

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